九段会館テラスコンファレンス&バンケット

KUDAN-KAIKAN TERRACE CONFERENCE & BANQUET
  • #文化財の動態保存
  • #婚礼対応
  • #ユニークベニュー
  • #レトロモダン

施設・プロジェクト概要

登録有形文化財の建造物「旧九段会館」の保存・復原プロジェクトとしてオープンした「九段会館テラス」。創建当時の貴重な技術を生かして保存・復原を行った保存部分と、お濠を臨み最新のIoTを活用した地上17階建ての最新鋭のオフィスとなる新築部分からなるレトロモダンな施設です。

その2階・3階にあるのが、歴史を受け継ぎ生まれ変わった「九段会館テラス コンファレンス&バンケット」。企業セミナーから婚礼まで、あらゆるイベントに対応可能です。

ビル概要

所在地〒102-0074 東京都千代田区九段南1-6-5 九段会館テラス
アクセス東京メトロ・都営新宿線「九段下」駅徒歩1分
敷地面積約8,800㎡
延床面積約6万8,000㎡
規模地上17階、地下3階、高さ75m
開業2022年10月

施設概要

用途バンケット、コンファレンス
部屋数全11室
面積約26㎡~298㎡
天井高2.8m~7.2m
収容人数最大約700名(各部屋12名~174名)

施設図面

施設企画・コンサルティングの特徴

文化財を動態保存するバンケット企画の提案

コンペ提案における行政与件

1934年に完成した旧九段会館は、貸しホール、結婚式場、宿泊施設などを有する複合施設として稼働していました。

創建時の 宴会場「バンケットホール真珠」
創建時の応接室「ゲストルーム雅&葵」

しかし、2011年3月の東日本大震災で被災し、惜しまれながら閉館し、土地と建物が国に返還されました。

その後、歴史的価値が高い旧九段会館を保存しながら70年間の借地契約で高度利用するプロジェクトの事業者を決める入札が行われ、東急不動産・鹿島建設のJVが落札しました。入札要件の中にある「正面玄関が位置する北側と、内堀通りに面する東側の外観および内装の歴史的価値が高いため、必ず保存すること。単に保存するのではなく、使いながら残していくこと」をどのように実現するかが、落札の重要なポイントとなりました。

東急不動産は、日本の伝統的な瓦屋根をかぶせた「帝冠様式」と呼ばれる、和洋折衷の建築様式が特徴の建物北東側を保存しながら、地上17階・地下3階の建物を新築する提案をしました。保存エリアに含まれる宴会場「真珠」と「鳳凰」は、創建時の素材を再利用して復原し、再び宴会場として利用できるようにする、というプランをコンペで提案。このプランを提案するにあたり、実際にどのように運営を実現するのか、当社が一緒に企画を練らせていただきました。

インフィールドの提案

当社では、これまでの多様なイベント会場の運営実績から、この「真珠」「鳳凰」という歴史的価値の高い宴会場を「長期的な視点で事業継続可能な収益を生み出すことのできる会場」として運営できると判断しました。保存しながら、時代に合わせて最低限必要な設備の提案や、宴会場以外のエリアを貸し会議室とする、「コンファレンス&バンケット」の動態保存プランを東急不動産に提案しました。

真珠
鳳凰

プロジェクトの進行中には、保存とイベント演出設備設置の線引き、契約条件と事業収支の数十回に渡る変更、婚礼パートナー企業探しなど、企画後のコロナ禍による業界全体の落ち込みなど、当社にとってさまざまなハードルがありました。しかし、デベロッパーと設計・建築に関わった皆さまの大きな協力のもと、国内でも屈指のユニークな会場「九段会館テラス コンファレンス&バンケット」を誕生させることができました。

会場を保存していくために必要な資金を、自ら収益を上げて運営する、まさにサステナブル(持続可能)な会場として、「歴史と文化を継承し発展させていく」というテーマに沿った提案ができたこと、そしてそれが行政からも高い評価を受けて事業者の落札に貢献できたことは、当社にとって大変貴重な経験となりました。


壁・床・天井を傷つけずに、本当に“使える”設備を設計

宴会場の設備設計については、文化財として保存復原の制限がある中で、単純に復原された“見るだけ”の宴会場ではなく「人が集まる」ことと「実際に使える」実用的な設備を目指しました。デベロッパー、ゼネコンと何度も協議を重ねて設計を調整し、BtoCイベントの婚礼にも、BtoBイベントの企業シンポジウムにも、どんなイベントでも「主催者様が利用しやすい」会場を目指しました。

床置きの映像・音響機器

壁・床・天井は保存の観点から、必要最小限の加工に収めなければいけないという条件の下、運営面でカバーできる映像音響に関しては基本的に床置きのプランを採用。ただ、天井になければならない照明器具などについては、保存・復原の制約の範囲内で、意匠の邪魔にならないよう機種や場所をプランニングしました。

映像・音響機器は床置きのプランとした分、会場内での設置自由度が上がり、会場の提案の幅が広がりました。その自由度の高いシステムを成立させるために、電源回路は可能な限りの増設を要望し、壁床の加工が最小限で済むように、元の巾木意匠に合わせた特注配管巾木を作成し宴会場全体をぐるりと囲み、どこからでも電源が取れる工夫を施しました。

また、AV操作卓は無骨な存在になりやすいため、クラシカルな会場の意匠に合わせて特注で製作。見た目だけではなくプロの音響・映像オペレーターが、オペレーションしやすいように細部にまでこだわりました。

宴会場全体をぐるりと囲む配管巾木

繊細な調光ができる照明機器

照明は、創建当時のシャンデリアを再現する建築要件の中で、当初ON/OFFのみ・非調光のシャンデリアランプが予定されていましたが、満足度の高いイベント演出にはダウンライトと合わせて調光できることが必要不可欠でした。そのため、シャンデリアの柔らかい雰囲気を再現しながら調光できるDMX制御LEDランプを、照明業者と共に提案。

自由度の高い照明効果を演出するムービングライトを常設

最終的に意匠面と演出面の両方の与件を満たしたシャンデリアの実装が叶い、婚礼などでの一生に一度の、繊細で記憶に残る照明演出を実現できたことは、利用者に感動を与え、満足度を上げる大きな要因になりました。

文化財という建物の性質上、更新やメンテナンスの頻度が少ない設備機種やシステムを採用し、保存しながら利用する、という長期的な計画が必須です。その中で、保守を考えた設備設計についても、共に歩む運営会社だからこそのパフォーマンスを発揮できたと感じています。


歴史と品格あるバンケットと共存できるコンファレンス企画

バンケットをただの宴会場として運営すると対象マーケットが狭まり、平日日中などの時間帯の稼働が限定的になります。そこで、コンペ時から会議室を併設することを提案し、当社の一番の得意分野であるBtoBイベント誘致に長けたコンファレンスとバンケットをセットで稼働させることを目指し、プランニングしました。

バンケットは300㎡・約200名収容の企業イベントの実施を前提に企画し、机や椅子などの家具類も、九段会館の歴史と品格を感じられるグレード感で選定。当社の運営実績から、この規模感であれば宴会や婚礼のみならず、医療系の学会やIT系の複数部屋を使用したフォーラム、省庁主催の各種シンポジウムなどの誘致が可能と判断し、その誘致に必要となる広さの会議室について、大中小のバリエーションで部屋割りを企画しました。

会議室部分の内装は、会議室単体で企業研修やセミナーなどに利用することも想定して華美な装飾は避けつつも、バンケットのレトロモダンな雰囲気に合わせて、壁は落ち着きのある木目調のクロスを採用。家具類のアクセントカラーとして、色味を抑えエイジング加工のように見える「シャンパンゴールド」を家具メーカーと仕上げていきました。

会議室とバンケットを行き来しても違和感なくご利用いただけるよう、会場全体の雰囲気の統一感を大切にしました。特に会議室とバンケットの間に位置するコンファレンスラウンジは、そのデザインに工夫を重ね、レトロモダンなデザイン家具の選定や飾り棚の装飾などの細部に至るまで、こだわりました。

このバンケットとつながり歴史を感じるラウンジを含め、施設全体の雰囲気こそが、他の新規ビルには作り出すことのできない、唯一無二のオリジナル性を生み出し、他の競合施設との差別化に寄与しています。

施設運営・マネジメントの特徴

高い技術提案力が支えるバンケット運営

九段会館テラスのバンケットホールは、文化財保護の観点から、イベント演出に必須な映像・音響設備の常設設置が制限されています。そのため、全てをお客様のイベントに応じて設置するという「仮設対応」で運営しています。一般的なホテルバンケットであれば、映像・音響に特化した専門会社に外部発注するのが普通です。

一方当社には、音響や照明などのテクニカルオペレーター出身のスタッフが多く在籍しています。文化財の保護のために施設の壁床天井に組み込むことができなかった機材の設営を、プロフェッショナルの技術を駆使して、安全面でも機能面でも万全の状態で提案、設営しています。

例えば、プロジェクターとスクリーンは、客席を潰さない超単焦点レンズを採用し、毎日異なるお客様の要望に合わせて最適な視野角・解像度などを精密に調整しています。また、音響についても高性能なアンプ内蔵自立式スピーカーを客席の数と範囲に合わせて設置・調整し、最適な音質バランスでチューニングを行っています。

また、映像・音響設備が仮設であることを逆に活用し、会場の縦使い・横使いをお客様のご要望に合わせて提案しています。フレキシブルに対応できる技術力の高さを生かし、本来はデメリットであった要件をメリットに変換しています。技術力とホスピタリティを兼ね備えたスタッフが、お客様のイベント成功のために伴走しながらイベントを成功させる、そんなチームを目指しています。

また、旧九段会館は歴史的に結婚式場として利用されてきた大変有名な会場で、現在も多くのお客様に婚礼でご利用いただいています。婚礼の本番は、新郎新婦ご両家の皆さまにとっても人生の中で特別な一日であり、我々運営者も企業向けイベントにはない緊張感があります。テクニカル面でも、この大切な一日を最高の舞台にできるよう、機材のメンテナンスや調整は欠かすことができません。

さまざまなイベントでこの会場を信頼してお任せいただける日々を積み重ねることが、会場を長年に渡って運営し、動態保存していく際の礎になると確信しています。日々、進化し続けるイベント業界の動向を常にチェックし、知識と経験を生かし、スタッフ間で操作マニュアル作成や勉強会を実施してスキルアップに取り組んでいることも当施設の強みです。


最良の婚礼パートナー企業と作る、新たな九段会館の歴史

婚礼に強いパートナー企業の開拓

当社には婚礼の運営ノウハウや経験がなく、婚礼に強いパートナー企業開拓が課題のひとつでした。

数ある婚礼会社の中でも、バリューマネジメント社(以下、VM社)は「日本の文化を紡ぐ」をテーマに、文化財などの歴史的建造物や街並みを宿泊施設・レストラン・結婚式などへと利活用し、後世に残す取り組みを事業としている会社です。

実際にVM社が運営されている施設に訪問し、料理の試食やサービスを体感し、当施設とも親和性の高いパートナー企業となっていただけるのではないかと感じました。クオリティの高さと、施設コンセプト面だけではなく、インフィールドの考えるサービスとの親和性の高さから、婚礼会社として運営をお願いすることとなりました。

また、VM社は、当初から九段会館テラス5階のカフェテナントとして入居する予定でした。このカフェのキッチンと、バンケット施設内のキッチンを合わせて上手く使用することで、バンケットから至近の位置に厨房を構えることとなり、出来立ての温かい料理を、フォーマルな正餐スタイルからカジュアルな立食スタイルまで提供できる環境が整いました。

近年は年間数十件の婚礼を実施いただき、九段会館の歴史と意匠を最大限活用した正面エントランスやプラザでの人前式など、九段会館らしい婚礼提案をされています。旧九段会館から、建て替え後の九段会館テラスまで、世代を超えて挙式を執り行うご家族もいらっしゃり、この施設の婚礼の歴史を未来へつなぐことができました。

ケータリングパートナーとしても提携

さらに、婚礼だけに留まらず、その素晴らしい料理をビジネスパーティーでも提供していただくべく、VM社とはケータリングのパートナー企業としても契約しました。

実際に、セミナーや式典後の懇親会で、VM社の着席コース料理や立食ビュッフェをご提供しています。パーティーメニューの常識を覆す華やかでフォトジェニックなモダンフレンチが、ホテルではないバンケット会場で食べられるため、お客様からも感動の声をいただいております。

また、「ビジネスシーンでバンケットでの着席コースとなると、料金が高くて……」というお客様の声にも応えるべく、VM社と綿密に打ち合わせ、1万円以下のコース料理を含め、6つのコース料理プランを考案。九段会館テラスのバンケットに合わせたサービスを追求しました。

この着席コースという提供スタイルは、当社の既存会場ではほとんど実績がないものです。しかし、このバンケットでは開業後まもなくからリピーターになる方が相次ぎ、当社としても新たな経験を獲得することができました。


ユニークべニューとして、MICEイベントを誘致

ユニークべニューとは、歴史的建造物、文化施設や公的空間などで、会議・レセプションを開催することで、特別感や地域特性を演出できる会場のことを指します。海外からの会議やイベントを誘致する中でも、登録有形文化財「旧九段会館」の歴史を感じる佇まいと近代的なオフィスビルの融合を果たした建築物である九段会館テラスが、外国人の方々にとって「ユニークべニュー」であると感じていただける可能性があります。

そして、当施設の面積・部屋割りであれば、例えば国際会議やシンポジウム、国際学会などの開催が可能です。これらの案件では、複数室を同時に利用いただけるため、1件あたりの単価も高く、収益性の観点からも、今後も当施設が継続的に獲得していきたいお客様です。

実際に、海外自動車メーカーのお客様向けのインセンティブトラベルのコンテンツとして、サムライのチャンバラショーを間近で観覧し、袴の着付けや真剣の居合などが体験できる「文化体験イベント」の会場としてのご利用がありました。

ご担当者様からは、単に文化体験ができるスペックの会場というだけではなく、九段会館が日本の昭和史に残る歴史的な舞台であることや、日本を象徴する日本武道館を間近に記念写真撮影ができるポイントであったことが重なり、「クライアントに大変喜ばれた」とご満足いただくことができました。

また、海外からのゲストが多人数参加した国際会議での利用の際には、バンケットをランチビュッフェ会場として使用し、料理の内容も海外参加者向けのベジタリアンメニューをご用意するなど、ダイバーシティの観点でもお客様に満足いただけるよう、サービスを充実させています。

ベジタリアンメニュー対応のご利用事例

他の会場との差別化が図れている、この施設だからこその付加価値を生かして、海外からのゲストに向けた文化体験の手配をできるようにサービスを拡充するなど、海外からの案件の誘致を目指しています。


実施イベント

講演会/セミナー
学会/シンポジウム
会議/研修
配信(ハイブリッド方式)
パーティー/懇親会
撮影・収録

お客様の声

文化財を動態保存する
ハイブリッドバンケット開発秘話

東急不動産 INFIELD
プロジェクト概要PROJECT OVERVIEW
「登録有形文化財である旧九段会館の一部を動態保存する」という与件のプロジェクト。保存の制約下でも、何度も協議を重ねて実用性にこだわった設備設計を実現しました。バンケットと連動したさまざまな規模の会議室を備えることで、長年親しまれてきた婚礼施設としての伝統を引き継ぎつつ、企業の記念式典やWEBセミナー、学会や懇親会など幅広いビジネスイベントにも利用されています。
お客様のコメントCUSTOMER COMMENTS
何でも忖度なく率直に言ってくれるところがとてもいい。だったらこっちはこうできるという本質的な議論がしやすいんですよね。上下関係や受発注者の関係じゃないけれど、忖度されまくってもしょうがないですし、それで本当に良いものは作れないと思うから。そこはとてもいい関係ができたかなという気がしています。
記事を読む
東急不動産株式会社 伊藤 悠太 様

運営チームからのメッセージ

九段会館テラスコンファレンス&バンケット
チーフマネージャー
浅野 喬

初めて「真珠」「鳳凰」に足を踏み入れた瞬間、荘厳な空間に圧倒されたことを今でもよく覚えています。「歴史的価値のある施設を動態保存していく」という当社の新しいチャレンジに対して、大きなプレッシャーを感じました。

しかし、企画が進むにつれ、オーナーや設計者・施工者の情熱とプロフェッショナルなこだわりを目の当たりにして、誰にでもできる経験ではないと、挑戦する決意を固めました。

これからも、当施設ならではの懇親会のご提案や、国際会議、日本の伝統的な文化体験などでもご利用いただけるバンケットとして、“参加者の記憶に残る会場”として、お客様のニーズを引き出し付加価値を作り、歴史を未来に紡ぐ会場運営を目指します。

インフィールドは独自の人材戦略により、

高いスキルと情熱を兼ね備えた社員を育成しています

ホール・会議室の収益化には、高いホスピタリティと専門知識を持ったチームが不可欠です。インフィールドは、そんなチーム作りを全社的に取り組んでいます。

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